『表参道のヤッコさん』
“表参道のヤッコさん”こと高橋靖子さんは、日本で初めて“スタイリスト”という職業名で税務署で申告をした方(本書によりますと、スタイリストという仕事をしていた人は彼女の前に何人もいるそうで、高橋さんは「自分がスタイリスト一号」とは言っていません。スタイリスト1号というのは、税申告をした第1号という意味で、そのことは渋谷税務署の職員に言われたそうです)。本書はそんなファッション業界の黎明期を駆け続けた高橋靖子さんの青春グラフィティ。
本書の舞台は1970年代の表参道・原宿エリア。1970年代の日本とは、日本が戦後から本格的に立ち直り、新しい文化がどんどんと想像さていく刺激的な時代。その文化の牽引役としてカメラマンやコピーライター、クリエイターといった職業が脚光を浴び始めていた。各クリエイターは、それまで鬱積したクリエイティビティを一気に吐き出すかのように様々な世界でその才能を花開かせていった。そんな時代背景の中で、クリエイターたちは「表参道」、「原宿」という土地に自然と集まり、この土地が若いエネルギーを吸収し、文化を生み出すエネルギーステーションとなる。現在も表参道、原宿はファッションの発信地であり、十人十色のファッションで闊歩する街であるが、1970年代は時代の追い風も手伝って、新しいものを産み出す力が今よりもあったのではないか。
本書を読むと、表参道・原宿の特別な空気を感じる。この土地にいることはすごいことなんだなぁと誇りももてる。この土地に関わるすべての人に、この土地に集うすべての人に、本書の空気を味わっていただきたい思う。
『表参道のヤッコさん』
著者 高橋靖子
出版社 アスペクト
出版日 2006/2/17